最新号 2025年10月
芸術鑑賞
先日、知り合いの作家の方が個展を開催されるとのことで、銀座のとあるギャラリーへ行ってきました。
そのギャラリーは、中央通りから少し外れた場所にひっそりと佇む、趣あるビルの一角にありました。
私は以前から美術作品の鑑賞が好きで、展示内容を調べては様々な美術館へ足を運んでいました。
しかし、最近は美術とは距離を置き、作品を鑑賞する機会も少なくなっていました。
そんな中での個展のお知らせ。これは観に行くしかない、と思い至ったのです。
こじんまりとした一室へ足を踏み入れると、とてつもないエネルギーが小さな空間を一杯に満たしているのがわかりました。
作者の方と一言挨拶を交わし、いざ作品へ目を向けます。
そこには、ただ淡々と作品が並べられていました。
けれども、その一人一人がまるで私に向かって一斉に話しかけてくるように、あるいはこちらを凝視してくるように、とにかくその場から動けなくなるほどの作者の思いが私を襲ってきます。
それを真正面から受け止めて、咀嚼して、作品とも自分自身とも対話をする。
私は、この感覚、この時間が、とてつもなく好きだったのだと思い出し、ひとつひとつの作品からこれでもかというほどに溢れ出る作者の熱量に、心が打たれました。
改めて、作者とお話しし、作品の意図を伺いました。
やはり淡々と紡がれながら、それでいてずっしりと重みのある言葉の数々に、私はもう一度心を打たれることになります。
その後感想を聞かれたので素直に答え、意見を交わし、別れの挨拶をしてギャラリーを後にしました。
ビルを出て、晴れやかな気持ちになった半面、身体がとても疲れていることに気が付きました。
思えば、6つほどの作品を1時間半かけて鑑賞していたのですから、当然のことです。
ですが、それほど夢中になれることがそういえば私にもあったのだと思うと、非常に心地よい疲れに感じられました。
気が向いたらまた美術館に行ってみようと思います。
<S.N>