コラム「ちょんな」

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ちょんな 浜松建設業協会の総務・情報委員会メンバーによるコラムです。

最新号 2025年8月

古いもの好きの北の旅

 かねてから行きたかった稚内北防波堤ドームを見に行ってきました。

 出かけたのは5月中旬の風の強い日でしたが地元では穏やかな日和とのことでした。この防波堤ドームは稚内経由で行く利尻、礼文島に行きたいなと思いパンフレットを見ていて初めて知り行ってみたいと重い腰をあげて行動に移しました。
 この防波堤の計画は、明治期に立てられ南樺太が日本の領土となり稚内が連絡港として注目をされ始めてしっかりとした需要のもとに創られたもので観光用の施設ではないことも知り、ぜひ見てみたい所だと思っていました。

 この防波堤は、1931年(昭和6年)に着工して1936年(昭和11年)に完成したものです。この稚内港屋蓋式防波堤の規模は全長427m高さ13.6m柱の数は70本あり、半アーチ型を支える柱は古代ローマ建築を思わせるもので昭和6年に設計されたとは思えないデザインです。またこの設計はわずか2か月で行ったとのことで当時の技術者の能力の高さはすごいものがあると思いました。
 また地上部に見えているところだけでなく、基礎部のケーソンやコンクリート杭の使用など当時としての最先端技術を駆使していることや、上部構造物用の型枠は大型セット型枠を使用するなど工程の効率化なども工夫して施工しているなど見所、聴きどころも多々あります。

 単に防波堤だけでなく鉄道の駅として戦前のサハリン航路の乗客を波浪や風雪から守る目的で作られたものですが、過酷な環境下での構造物ですので残念ながら初期の構造物は基礎部分を除き昭和53年から全面改修されています。
 今現在も経年劣化の詳細調査が行われ歴史的構造物として維持管理されていますが、コンクリート診断士の試験勉強にはもってこいの教材ではないかと思いました。

 また、港からはサハリンは見えませんでしたが宗谷岬からはしっかりとサハリンが見え国境の町でもあることを再認識しました。

<T.K>